自分への夢を叶えるために家に帰って机に向かう田中くん。
その姿をお父さんが見にやってくる。
こんな子どもの姿がいつまで続くのかなんて思ったりするんじゃないかな。
夢への努力を一場面の演出で描いているけど、
実際は夢にたどり着くまでにそれ以上の努力が必要なのだから。
しかも田中くんはまだ第一歩を踏み出したばかり。
「オレは最高の友達と本気で同じ夢見てんだよ。
父ちゃん大学行かせてくれて有難うな。
あんな三流(産流)大学だけどあいつらに出会えて本当に良かった。」
目を輝かせてこう言う息子に父親は
「そうか、だったらやるしかねぇな。オレも次郎と本気で頑張る。お前も本気で頑張れ」
と言うしかなかった。
田中くん、短期間だけど多々のトラブルで成長したよなぁ。
「大学行かせてくれて有難うな」なんて親子間の関係がともに見えてこないと
安易に言える言葉じゃないと思うよ。
で話はその3年後の妄想に入るわけで。
TMHトラベルで活躍する男性レギュラー陣の姿が描かれるんだけども、
その旅行会社の壁に貼られている観光ツアーのポスターが細かいなぁって思った。
タイガートラベルにも貼ってあったポスター。
その時は別に世間でありふれているポスターを手配して貼ってるようにしか
自分は恥ずかしい話だけど見てなかった。
今回は「サロンカーなにわで行く……」「木次線スイッチバック……」という
花形くんと桃山くんというごく限られた人にしか思いつかないような内容の
ポスターになっていてドラマの枠を越えて実物としても気付かないような
出来上がりになっていたからそれに驚いてしまった。
だってドラマでたかだか主人公の妄想の1シーンで気付かなければ
どうでもいい背景だと思う。そこにそれだけ神経注いでいる人がいるんだもの。
簡単に出来るものじゃないと思うんだよね。自分はそう。だからなおさら。
そして実業家になった田中くんのもとに舞い落ちるアルコンハンカチ。
ここでも第1話を連想させるような演出がわざとらしいんだけど、
それがまた凝ってるよなぁって思ったりする。
妄想を語る田中くんに
「良い話だねぇ。是非本当にしてもらいたいもんだねぇ」というお婆さん。
「大丈夫、運命で結ばれた二人には思ってもないことが起こるの。それを信じなさい」とも言う。
結局、お婆さんはホラ吹きと役割設定されているけれども、常人では信じられない事を
普通に現実のものとしてるから「ホラ」って思われてるだけで、
実際はジョージと付き合っていたりするのをはじめ、
ただの「ホラ吹き」ではない気がする。
この作品でお婆さんもキーパーソンだと思う。
「嘘も本当にしてしまえば嘘でなくなる」って言葉に代表されるように
夢ってのは所詮「嘘」なわけで、(叶えられなければ嘘で終わってしまう)
それをどうやって本当にさせるのか田中くんにあれこれ背中を押すのが
お婆さんの役割なんじゃないかなぁ?
延岡で仕事に励むメーテルのもとに花形・桃山両氏が
田中くんが捨てたプレゼントを送る。
些細な口論で今まで捨てなかった時計を捨ててしまったことが
この事へ伏線になってるなんて心憎い演出だなぁ。
中身は特注の時計。「いつか俺の特急列車に乗ってくれないか」の言葉とともに。
時計はどうしたのかっていう10話冒頭の会話がここでつながり、
OPで走ってる特急列車もここで登場。北斗星の切符も同封してた。
そんな事を当の田中くんは知ることもなく、カフェ&バーステーションへ舞台が変わる。
いずみ「あ、その切符(北斗星)照美さんに送っちゃったそうですよ」
田中「え、何!?何だよそれ。なに勝手なことしてんだよ。大体照美くん今延岡なんだよ」
ここで桃山くんの超人的時刻表乗り継ぎの台詞がある。
彼は航空機まで把握してたりする。
田中「迷惑なんだよ。迷惑。頑張っている照美くん邪魔してどうすんだよ。
大体オレが歯を食いしばって我慢してるのに余計なおせっかいなんだよ」
花形「お前だって余計なおせっかいばっかりしてきたじゃないか」
というわけで、最終回を盛り上げる花形くんと桃山くんのサプライズ。
田中くんのお株を奪う演出とこのセリフは今までの積み重ねがないと
たどり着けなかったんじゃないかな。
そして出発時刻が近づいて、九州からの飛行機がストップしていることが明らかに。
桃山「余計な期待させて悪かったな」
田中「バカ言うなって。期待とかしてないから。かえってホッとしている。
だって来る気あんのかどうかもわからないしさ、それよりほら、今旅を愉しもうよ。
せっかく北斗星の前にいるのに写真すらとってないじゃん」
空元気を振りまく田中くん。最後までそういう素振りが変わらない。
北斗星が出発。
はしゃぎ様もさることながらどこかぎこちない5人の雰囲気って出てますね。
仙台へ着いたところでメーテル登場。
実際にブルトレを新幹線で追いかけたことあるから自分は驚かなかった。
気になったのはグランシャリオへと桃山、花形、理子、琴音が出て行ったあとで
田中くんが一人残されるシーン。
ガラスに彼の姿がハッキリ映し出されて話が進んでいくのが
狙ってる演出っぽく思えたけど、実際はどうなんだろう?
結果的に彼の姿が映っているのか、映すために何かやったのかってのでも
物事の捉え方って違うと思うんだけど……。
確かにそういうのがなくてもメーテルとの再会っていう話は見せ場であるのは
変わらないんだろうけどさ。
メーテル「よっ!」
田中「何で照美くんここにいるの?」
メーテル「鉄道はこれくらいの風じゃ休まないのよ(以下略)」
田中「すげぇ」
メーテル「時刻表は全部頭に入ってるもので」
桃山くんを真似たメーテルの言い回しに大笑いしちゃった。
思えばさも当然のように桃山くんを演じている秋山さんは
こういう台詞を何度もこなしているけど、
自然に脳内から出てくる言葉じゃなくって、意識して演技として言葉を出してるわけだ。
役者さんはスゴイよなぁ。
田中「キター!!やっぱり照美くんテツなんじゃん」
メーテル「実は。お父さんを鉄道にとられた気がして認めたくなかったんだけど、
田中くんと出会って私も自分の気持ちに素直になることにした。私は鉄道が好き。
田中くんも好き」
田中「い、いや、オレも好きだよ照美くんのこと。世界中の誰よりもオレが間違いなく
一番絶対永久に好き」
メーテル「ありがとう」
田中「照美くんその時計……」
メーテル「今度こそ正真正銘のペアウオッチだね」
田中「オレの特急列車に乗ってくれるの?」
メーテル「ノンストップでお願いします」
そのあと、4人は戻ってくるでしょう。そういうドラマです。これは。
舞台はロビー室へ。田中くんとメーテルが遠距離恋愛になるってことから
「何言ってんだキミたちは、え?あんな?月とか火星とかまだしも、
オレみたいな大物にとって九州なんて遠距離でも何でもねぇ。
照美くん。寂しかったらいつでもオレを呼べ。
照美くんが例えどこにいようとも特急田中はいつでもかけつけるから。
だって線路は日本中どこの駅にもつながってるから。
よし決まった笑顔イタダキ!!」
っていう田中くんのセリフと男性3人のじゃれあいで話が終わり
「喜びの歌」へと入っていくんだけど、
函館駅でED79からDD51への機関車付け替えのシーンも出てくるよね。
ここで彼らが騒ぐ。
おそらく北斗星1号で物語が進んでいるから、
函館駅でのこのシーンの撮影ってのは4時半前ってことになると思うんだ。
取り直しとか出来るとかは別としてだけど。
そういう早朝にここまでテンションあげて演技ができる6人ってのはすごいし
限られた停車時間内でこれだけの撮影を色々と手を回していてもこなすっていうのは
プロだから当たり前ってわけではないと思った。
(自分の場合は起きてすぐ寝ちゃうから)
でもこのシーンがリアルタイムだと
ロビー室で「九州なんて遠距離でも何でもねぇ」っていう田中くんが語るシーンは
4時前じゃないと話が成り立たないんだよねぇ。
その時間に自分はとても騒げません。
そして物語は終わるんだけどもやっぱり不満
三島くんと田中くんは違うんだ!!ってのがハッキリしなかったこと。
「いつでも駆けつける」なんて事を口に出すのは簡単だけども、
実際にそれをこなすというのは並大抵な事じゃないと思うんだ。
そういうのを越えていく過程が描かれないで、
田中くんとメーテルの“壮大なラブストーリー”が軌道に乗り始めたところで
話が終わってしまうのは納得できないなぁって思う。
スタートラインに着くまでは三島くんにも出来たことなのだから。
それからメーテルを幸せにして自分の夢を叶えるっていうのは
彼には出来なかったこと。
それを田中くんが叶えて(叶えようと尽力して)初めて、彼は違うんだと思える。
無神経だけどそういうことかな。
ドラマでメーテルは「延岡」が赴任地になってるけど、
田中くんは起業資金を貯めるアルバイトをしている段階で
どれだけ自分の体力やおカネを費やして彼女のもとに駆けつけることはできるってのは
ハッキリ言ってアヤシイと思う。
一方で花形くんのセリフ「じゃあその目標を3年後のお前も持ち続けられるのかよ」
そういうのもドラマは答を示してない。
起業という段階に至るまでに数々の障害ってのが待ち受けてると思うんだ。
そういう中で田中くん、花形くん、桃山くんの3人が一人でも挫けることなく
TMHトラベルの創業にたどり着けるのかっていうのも
希望を奪ってしまうドラマになってしまうかもしれない。
それでも描いて欲しいと思う。
そして個々の仕事の中で6人で再び「北斗星」に乗り、
この第11話を懐古するような話を描いて欲しいです。
同じものを積み重ねるってのは自分は嫌いではありません。
過去が積み重なって今を造り上げ、将来を拓いていくのだから。
てなわけで臨時特急田中81号とか根拠なく期待してます。
死者に鞭打つような感想。
逆に「もう満足です。」それで終わりにした方が良いのかなぁ?
自分は死んでも「特急列車に乗ってくれ」とはいえないなぁ。
頑張っても快速列車がいいところかな。
多くの特急列車に追い越されたり、途中駅で長時間停車したり、
車両トラブルが発生したりといいことない列車。
世の中満員状態で走る列車もあれば、ほぼ空席に近い状態で走ってる列車もある。
目的地を目指しているのは変わらない。
言い逃れ?そうかも。
スタッフのみなさまお疲れ様でした。
そう言いながら続編期待してるのは
本当にそう思ってないからかもしれません。ひどい。
※愚考だから!!本気にしないで下さい。制作者の意図と関係ないです。